レスキュードローンについて

ドローンでレスキュー

2020年12月10日 17時58分


どんなレスキューオペレーションであっても、現場は混沌としてストレスにあふれています。レスキュードローンを操縦する場合、空中の状況をまず把握しなければなりません。空には既に航空機がレスキューに駆けつけているかもしれません。同じミッションに当たる航空機の任務を妨げないようにしなければなりません。
 
このレスキューオペレーションが、たとえば災害地域で行われている場合は、すべての任務において必要な手順とコミュニケーションがあります。レスキュードローンを操縦する場合、は必ずこれに従う必要があります。
 
地震などの自然災害が発生した場合、行方不明者を見つける時間は限られています。救助に関わるすべての人々は同じ目的の下に団結しています。行方不明者を探し出し、救出すること。それが捜索に関わるすべてのメンバーの願いです。レスキュードローンを操縦する場合、それがどんなミッションであっても任務に忠実に、そして素早く効率的に活動する必要があります。
 
レスキュードローンが出動する場面は、水難事故や地震、火事などの場面だけではありません。認知症患者の捜索、登山中の滑落事故、建物の​​崩壊に至るまでさまざまです。
 
レスキュードローンは、災害時や事故で行方不明者やけが人が出た場合、その特性から初動対応をすることが多くなります。上空から現場付近の状況確認や行方不明者の居場所を特定し、実際に現場に入る救助隊に連絡するなどの任務が中心です。場合によっては救援物資を現場に運び、投下するといった役割をこなす場合もあります。
 
ドローンには、さまざまなハイテクが搭載可能で、超高画質カメラ、赤外線センサー、熱感知センサーなどが装備されます。熱感知センサーは、行方不明者の捜索、生死の確認に高い能力を発揮します。
 
赤外線センサーや熱センサーは、森林地帯や海の中、崩落した建物などでの行方不明者捜索に使われます。センサーにより夜間の視認性が向上するため、一刻を争う救助活動の現場において、強力な武器になります。レスキュードローンは広い範囲を飛行し、行方不明者に関する情報を収集します。空からのセンサーを使った探索作業は、より早く行方不明者にたどり着くためにもっとも重要な作業と言えるでしょう。

 
 ドローンはレスキュー活動の初期に強い
ドローンはコンパクトで機動性に優れているため、ヘリコプターでは行くことができない地域、レスキュー隊が入れない場所へのフライトが可能です。初動対応は、時には生死を分ける可能性があるため、このドローンの機動性はレスキューにおいて重要な要素となります。プライオリティーは、初動対応者とボランティアの安全を確保しながら犠牲者を救出することです。
 
生存者が確認されていても、その場所に到達できない場合は多々あります。レスキュードローンは、生存者が救助されるまでの間、生存者のライフラインとなります。レスキュードローンは、救命救急アイテムやAED、さらには援助物資を積みフライトします。レスキュードローンが初動で機能すれば、救助された人たちの生存確率は格段に上がります。
 
海や湖など、幅広いエリアをカバーするレスキューオペレーションでは、ドローンは広範囲を飛行して行方不明者を捜索します。レスキュードローンは、行方不明者を見つけると、すぐに近くまで移動して、救命いかだなどの救命具を投下することができます。
 
レスキュードローンの使い道はこれだけではありません。たとえば、緊急医療の場でも活躍が期待されています。離島や僻地での緊急医療にレスキュードローンを活用するアイデアは現実味があります。アレルギーによるアナフィラキシーショックのような、緊急性を要する手当に、レスキュードローンの機動性はマッチするでしょう。

 
 自然災害時のレスキュードローン
日本は、地震、台風、火山の噴火や土砂崩れなどの自然災害と常にとなり合わせの国です。2011年の東日本大震災は記憶に新しいところですが、東北から関東という広範囲にダメージが及ぶ中、すぐには被害の状況を把握できなかった自治体も多くあったと聞きます。
 
しかし、そんな状況でも救助隊は動き出さなければならないこともあります。東日本大震災級の被害が想定される自然災害では、まったく手探りの状態で救助活動に入らなければならないことも考えられますが、ドローンを飛ばしてエリアの状況を把握してから行動をとる形になるでしょう。災害時におけるドローンの役割は、着実に重要さを増しています。
 
アメリカではしばしば林野火災が発生しますが、ここでもドローンの活躍が期待されています。林野火災では風、干ばつ、高温などが消火作業を妨げています。消火は航空機を投入して行われますが、低空を飛行する必要があるため危険が伴います。
 
ドローンはホバリングや細かく動くことを得意としているため、消火活動だけではなく、情報収集能力にも優れています。消火用ドローンは、視界が悪い条件下を飛行し、消化剤を散布することができます。消防隊は、ドローンから送られてくる情報を基に消火プランを立てることもできます。
 
ドローンは、レスキュー活動の際に、高解像度でエリアマッピングする能力を持っています。この能力は、林野火災の場合、ホットスポットやエリアごとにダメージの度合いを特定するのに役立ちます。

 
 レスキュードローンはWi-Fiアクセスポイントにもなる
レスキュードローンの役割は、捜索と救援物資等の運搬、消火やエリアマッピングに威力を発揮しますが、それらとはまた違う働きを求める動きもあります。こちらはスマートフォン時代において、もっとも重要な役割かもしれません。
 
これはレスキュードローンを簡易のWi-Fiアクセスポイントとして使用するという考えです。大きな災害が発生すると、電話やインターネットなどのライフラインが分断されてしまうことが考えられます。東日本大震災の際は、携帯電話がつながりにくかった割に、ソーシャルメディア上に多くの情報がシェアされ、大いに役に立ったと聞きます。被災時に簡易アクセスポイント、そして簡易充電ポイントになる。ドローンのまったく新しい利用法でしょう。

 
 嗅覚を持つレスキュードローン
災害に巻き込まれた人々を、嗅覚を持つドローンにより捜索しようという試みも、研究者らのグループにより行われています。
 
グループがテストに使用したデバイスは、手の平程度のサイズで、レスキュードローンに装備、または通常のレスキュー隊員が所持して使用することができます。地震や崖崩れなどの現場では、倒壊した建物周辺でレスキュードッグを投入した救助活動が行われることがありますが、正にそれをドローンでやってしまおうという考え方です。
 
災害現場では常に二次災害のリスクがともないます。そのため、人の手の届かない場所を、こまめに移動しながら捜索することのできるドローンは有効なのです。
 
赤外線熱感知カメラを搭載したレスキュードローンでも、がれきの中に取り残された人々を捜索することは可能ですが、意識不明の人を見つけることは困難でした。
 
嗅覚を持つドローンは、人が発する成分を嗅ぎ分けるセンサーを備えています。
 
嗅覚を持つドローンは、人間が発する化学物質・アセトン、アンモニア、そしてイソプレンを感知することができます。これらの化学物質を嗅ぎ分けるために、それぞれのためにセンサーがデバイスに組み込まれています。これらの化学物質は、意識があるかないかに関わらず、人間から放出されるため、この化学物質を検知した=そこに人がいる可能性が高いということになります。
 
さらに、呼気の中に含まれるガス=湿度と二酸化炭素を検出するセンサーもデバイスに組み込まれています。まだまだ開発中のソリューションではありますが、電流式のセンサーは高価でかさばることもあり、手のひら程度のデバイスに搭載できるセンサーが実用化されれば、ドローンレスキューの世界はさらに広がることになるでしょう。極めて少ない量の化学物質でも嗅ぎ分けることができるようになれば、人間の命の兆候を探し出す、安価で効果的な方法となるでしょう。